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第5話 レイのお店を取り戻した

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-08-27 02:54:08

 八百屋の物件を借りたいと言っていた人が、まだ残っていて手続きの最中だったっぽい。

「その物件を借りたいと言ってる方がいまして……」と職員が、その人を見つめて言った。

 見つめられた交渉中の人は迷惑そうな表情をして、役場の職員を睨んだ。「い、いや……私は、遠慮しておこう。少しばかり、金額の交渉で……折り合いがつかなかったところでして……失礼します。」と役場を出ていった。

 領主と揉めて良いことなんてないからな。下手をすれば毎月税金と家賃を上げられたり……文句も言えないしな。

 そうか、家賃と税金か……どうするよ? 相談してみるか。

「家賃と税金……は?」と、領主に聞いた。

「あぁ……例の件のヤツに払ってもらいましょう。やつが引き起こしたことですしな。わっははは……」と仕返しが出来て嬉しそうな笑い声を上げた。

「ということだ! その物件は、わしが押さえる事にした。貸し出すな」と領主が普段の表情なのか、威圧的な表情に変わっていた。出会った時も、威圧的で悪そうな感じだったもんな……

「……は、はい」と震えた声で役場の人が答えた。

「さて、これからですが……ご一緒に出掛けませんか?」と、接待モードに切り替わった表情をして俺に声を掛けてきた。

 あぁーこれ、俺の顔を覚えられちゃうんじゃないの……? 領主が接待してる人って認識されるじゃん……もう、領主への用は済んだんだが……帰れともいえないしな。

「いや、俺は八百屋の件を片付けないとだからな……」と言い断った。

 これ以上、領主と一緒にいると生活に支障をきたしそうだしな……。役場から出て商店街の方を目指し向かっていると、領主も後を付けてきていた。

 孤児なのか店の間の隙間に座り込んでいた女の子を見つけた。気になり近づくと怯えた表情をしていた。

 歳は俺より上に見え、銀髪で輝くようなエメラルド色の瞳をしていた。

「商店街には、孤児が寄り付きやすいですからな……残飯を漁りに……。おい! 衛兵、とっとと追い払え!」と領主が指示を出した。

「ん? 俺が話そうとしている邪魔をする気なのか?」とチラッと領主を見た。

「……滅相もございません……どうなさるおつもりで?」と聞いてきた。

「それを確認をしようとしているんだが? 邪魔をするな」と領主に言い、女の子のもとへ近づいた。

「なあ、そんなところで何をしているんだ?」と女の子に優しく話しかけた。

「……雇われていた店の店主の息子に……乱暴をされそうになって逃げてきたの……」と怯える声で言ってきた。

 という事は……孤児じゃないんだな? 店からということは計算や読み書きも出来るのか?

「それで……衛兵に言わないのか?」怯える女の子に聞いた。

「店主には、お金を借りているし……お世話になっているから……」と膝を抱えて俯いた。

「そうか……なら、借金を無くす代わりに、息子の犯罪を無かったことにするのはどうだ? それと今後、お前に関わらないという事に……」と領主を見た。

「……わしですか?」と領主が驚いた顔をした。

「他に誰がいるんだよ? 出来るのか? 出来ないのか?」と領主に聞いた。

「ユウ様が言われるのでしたら……どこの店だ?」と領主が女の子に声を掛けた。

 女の子と領主が話しをすると衛兵が店に向かった。話している感じ頭は良さそうだな。雑用をしていたわけじゃなさそうだった。

「それで、住む場所はあるのか?」と女の子に聞いた。

「……はぁ……無くなりました。」と女の子が答え、落ち込んだ表情をしてため息をついた。

「うちで、働かないか?」と声を掛けた。というかスカウトをした。

「え? どんな……仕事なのでしょうか? わたしにできる仕事でしたら……」心配そうな表情をして答えてきた。

「野菜を売る仕事だな。出来そうか?」と詳しく話をした。

「はい。それ……やってみたいです! ぜひ……お願いします! わ、わたしフェルシアと言います!」と元気に答えてきた。

 家と店を提供した感じだからな……とりあえず様子を見て賃金を決めると話しておいた。だが、家の提供だけでも助かると喜んでいた。

 話が一段落して終わったと思ったら、出向いていた衛兵が戻ってくると領主に小声で話をした。

「取り調べの準備が出来ましたぞ。きっちりと裁きを受けると知らしめる必要がありますからな」と領主がやる気を出して俺を見つめてきた。

 ん? 俺も参加するのか? いかにも誉めてほしそうな顔をしてるけど……

「そうか。まあ……雇い主の暴行を放置をしていれば、この町で商売の店で働きたいという者がいなくなるしな。それが原因となり働けない者が出てくると、治安も荒れるだろうしな……」と俺が言った。

「そう、それですぞ。分かって頂けましたか!」と、領主が嬉しそうに頷いていた。

 被害者である女の子は不安そうで気まずい顔をしていた。だが、彼女は嘘は言っていないと感じたため、店を任せることに決めた。彼女が気まずそうにしているのは店主に恩義を感じているためかもしれないが、気にすることはないと思う。雇い主や金を貸したら、なにをしても良いと思っているヤツらっぽいし。

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